ホームネットワーク

2階建て住宅のWi-Fi最適配置マニュアル

はじめに

2階建て住宅では、「1階は速いのに2階が遅い」「部屋によって電波が不安定」「オンライン会議が途切れる」といった悩みが起こりがちです。原因はルーターの置き場所障害物(壁・床・家具)、そして周波数帯の使い分け設定にあります。

本記事は、初心者でも迷わないように、間取り別の最適レイアウト中継器/メッシュWi-Fiの使い分け計測→調整の手順を、写真アプリ並みの簡単操作で進められるレベルまで分解して解説します。読み終えたら、あなたの2階建てでも「どの部屋でもサクサク」を実現できます。


本文

第1章|2階建てでWi-Fiが届かない理由と基本の考え方

初心者事例

  • リビング(1階)にルーターを置いたら、2階の子ども部屋で動画が止まる。扉を閉めると特に遅い。
  • 1階の奥(玄関付近)に設置したら、反対側の2階主寝室だけ弱い。

手順(まずは原理を理解)

  1. 電波の直進性を理解:5GHzは速いが回り込みに弱く、壁・床に遮られやすい。2.4GHzは遠くまで届くが混雑しやすい。
  2. 障害物を洗い出す:鉄骨、コンクリ壁、断熱材、床暖房の金属シート、水槽、大型家電は減衰が大きい。
  3. 上下方向の減衰:床材や天井は壁より厚く、真上/真下へは特に弱い。階段や吹き抜けは貫通しやすい。
  4. 中央・高所・開放が基本:家の中心、高さを稼ぎ、周囲に大きな金属を置かない。

具体ツール操作

  • スマホで**Wi-Fiの受信強度(RSSI)**を確認する。
    • iPhone:設定→Wi-Fi→接続先iボタン→RSSI(‐dBm表示が見られない機種は計測アプリを利用)
    • Android:設定→ネットワーク→Wi-Fi詳細、または「WiFiman」「NetSpot」などのアプリで**‐40〜‐60dBm**を合格ラインに。

注意点コラム

  • ルーターのアンテナは寝かせず垂直が基本。寝かせると水平方向の指向性が偏る。
  • ルーターの隣に金属ラック電子レンジを置かない。反射・ノイズで速度が落ちる。

ケーススタディ

  • 木造2階建て(延床30坪)、1階リビング隅にルーター→2階廊下で‐70dBm。階段付近へ移動すると2階全域で‐55dBm前後まで改善。

第2章|現状診断:家の「電波マップ」を作る

初心者事例

  • どこが弱いのか勘で動かして迷子に。引っ越し後ずっと不安定。

手順(15分で可視化)

  1. 家の簡易見取り図を紙に描く(各部屋・廊下・階段・吹き抜け・水回り)。
  2. スマホ1台で各ポイントのRSSIを計測(ドア開/閉で2回)。
  3. 値を色分けして地図化:
    • ‐40〜‐55dBm:優
    • ‐56〜‐65dBm:良
    • ‐66〜‐72dBm:要改善
    • ‐73dBm以下:不安定
  4. 弱いゾーンを直線距離・障害物で推定。床を挟む上下は別に記録。

具体ツール操作

  • アプリでヒートマップ:
    • iOS/Androidの「Wi-Fiアナライザ系」アプリでチャンネル使用率信号強度を同時チェック。
    • PCがあればNetSpotなどで間取り図に点を打つだけでマップ作成。

注意点コラム

  • 測定時は同じ時間帯に行う。夜は近隣の利用が増えノイズが多い。
  • 2.4GHz/5GHzを別SSIDで一度切り替えて計測すると傾向がわかりやすい。

ケーススタディ

  • 2階の一室だけ‐75dBm。下の1階に水槽+金属ラックがあり直上を遮蔽。ルーター位置を水槽から2m離すだけで‐60dBmへ。

第3章|ルーター選定と設置の原則(1階/2階/中央階段)

初心者事例

  • 旧型ルーター(Wi-Fi4/5)を使い続けている。家族が増え、接続台数20台で渋滞。

手順(機種と置き場所)

  1. 規格はWi-Fi6以上(11ax)。同時接続・混雑耐性が上がる。
  2. アンテナ数とCPUが余裕あるモデルを選ぶ(同時会議・動画向け)。
  3. 置き場所は家の中心・階段付近・吹き抜けの近くを優先。
  4. 1台運用の限界を見極める:延床30〜40坪で間取りが入り組む場合はメッシュ前提。

具体ツール操作

  • ルーター管理画面(例:ブラウザで192.168.0.1192.168.1.1)にアクセス→動作モード(ルーター/ブリッジ)バンドステアリングチャネル自動の有無を確認。

注意点コラム

  • 天井裏や収納内は熱がこもりやすい。夏場は温度で性能が落ちるため避ける。
  • フロア中央でも床直置きはNG。棚の胸〜肩の高さが目安。

ケーススタディ

  • 中央に階段がある間取り。階段吹き抜けの踊り場近くにルーターを設置したら、上下とも‐55〜‐60dBmで安定。扉の開閉影響も小さくなった。

第4章|中継器とメッシュWi-Fiの使い分け

方式仕組み長所短所2階建てでの向き・不向き
中継器親機の電波を増幅低コスト、設置簡単親機が弱いと弱いまま、SSID切替が発生する場合点の改善に向く、家の中心から外れた個室にピンポイント
メッシュWi-Fi複数ノードで一つの網自動切替、家全体が同一SSIDコスト高、初期設定が必要面の改善に最適。階段・廊下・吹き抜けを幹線

初心者事例

  • 中継器を2階奥に置いたが改善せず。親機の信号がそもそも弱かった。

手順(選び方と置き方)

  1. 点で弱い:中継器1台で近くに設置(親機と弱点の中間)。
  2. 面で弱い:メッシュ2〜3台で親機を1階中心、サテライトを階段付近/2階廊下へ。
  3. バックホール確保:可能ならサテライト同士を有線LANでつなぐ。無線なら5GHz/6GHzの専用リンクを優先。

具体ツール操作

  • メッシュアプリ(各社公式アプリ)→ノード追加最適位置診断を実行。指示に従って**「良/可/不可」**の表示を見て位置を微調整。
  • 中継器はWPSボタンで接続→LEDの色で受信状態を判断(緑=良、黄=要調整など)。

注意点コラム

  • 中継器を弱い部屋の中に置かない。親機から見て半分くらいの距離で強い電波を拾わせるのがコツ。
  • メッシュは異なるメーカー混在だと最適化が働かないことがある。同シリーズで揃える。

ケーススタディ

  • 1階リビング親機、2階奥書斎が弱い。書斎手前の廊下コンセントに中継器を設置→書斎‐58dBmへ改善。
  • 同間取りをメッシュに変更:親機1階中央、2階廊下と1階玄関付近にサテライト→家全域で‐55〜‐63dBm。

第5章|設定最適化:2.4/5/6GHz・チャネル・バンドステアリング・QoS

初心者事例

  • 2階のスマホが2.4GHzに固定され、速度が上がらない。近隣とチャネルが丸かぶり。

手順(設定の流れ)

  1. SSIDを整理:最初は2.4GHzと5GHzを別名にして挙動を把握→慣れたら同名+バンドステアリングに。
  2. チャネル最適化:管理画面で「自動」を基本。混雑がひどい時のみ手動で空きチャネルへ。
  3. 帯域幅:5GHzは80MHzが基本。干渉が多いときは40MHzに落として安定優先。
  4. QoS/優先端末:在宅勤務のPCやテレビ会議アプリを優先に。
  5. DFS注意:屋内レーダー回避帯域(DFS)では、稀にチャネル切替で通信が止まる。安定優先なら非DFS帯を選ぶ。

具体ツール操作

  • ルーター管理→ワイヤレス設定→バンド別にSSID名/チャネル/帯域幅を設定。
  • アプリで近隣APのチャネル使用率を見て、重なる帯域を避ける。

注意点コラム

  • スマホやPC側が古いとWi-Fi6の恩恵が少ない。端末の対応状況も確認。
  • バンドステアリングは便利だが、端末によっては遠くても5GHzを掴み続けることがある。そういう時は一時的に5GHzをオフ→2.4GHzにつなぎ直してから再度オン。

ケーススタディ

  • 2階寝室のスマートTVが途切れる。5GHz80MHzで近隣とかぶり。40MHzに縮小+非DFSに設定→実測はやや低下も、安定性が大幅改善し途切れゼロ。

第6章|間取り・ONU位置別:最適レイアウト完全ガイド

初心者事例

  • 光回線の終端(ONU)が玄関脇にあり、家の端からしか引き回せない。

手順(レイアウト選定フロー)

  1. ONU位置を起点に、有線でルーターを家の中心へ延長できるか判断(LANケーブルまたは宅内LAN端子)。
  2. 延長不可ならメッシュで中心をつくる。
  3. どの部屋を最優先にするか(リビング or 在宅ワーク部屋)で微調整。

具体ツール操作

  • ルーターをONU直下ではなくスイッチングハブ+LANケーブルで中心へ。
  • メッシュはイーサネットバックホール設定をオン(有線で繋いだサテライトは自動で有線優先になる機種も多い)。

注意点コラム

  • LANケーブルはCat6以上がおすすめ。長さは30m以内を目安に。
  • ケーブルを廊下に這わせない。巾木モール配線ダクトで安全に。

ケーススタディ(代表3パターン)

A:階段中央タイプ(吹き抜けあり)

  • 推奨:親機を1階階段付近、サテライトを2階廊下。
  • 効果:上下の抜けが良く、全域で‐55〜‐63dBm。

B:縦長の家(玄関〜リビングが遠い)

  • 推奨:親機を家の中央3分割の真ん中に。2階奥へサテライト。
  • 効果:端の個室も‐60dBm前後に。

C:ONUが端(玄関脇収納)

  • 推奨:ハブでリビング中央まで延長して親機を設置。延長不可なら玄関脇に親機+2階階段前にサテライト

参考表:よくある間取りと置き場所

間取りタイプ親機の推奨位置サテライト/中継メモ
階段中央・吹き抜け1階階段近く2階廊下吹き抜けを電波の幹線に
縦長LDKLDK中央棚上2階奥個室前端の部屋向けに1台追加も
L字型曲がり角の内側Lの先端廊下角をまたぐ位置に
ONU端部中央へ延長/不可なら端階段前延長できればベスト

第7章|実測→チューニング:最短で成果を出す検証ループ

初心者事例

  • 「置いたら終わり」にしてしまい、結局また遅くなる。

手順(1時間の改善サイクル)

  1. 初期測定:家じゅう5〜8点でRSSI・速度(fast.comなど)を記録。
  2. 移動テスト:親機を30〜100cm動かすだけでも結果は変わる。
  3. 設定調整:チャネル/帯域幅/バンドステアリング/QoSを一つずつ変更→再測定。
  4. 最終記録:地図にビフォー/アフターを保存。家族にも共有。

具体ツール操作

  • スプレッドシートに「場所/時間/バンド/RSSI/下り/上り/ジッタ」を列で管理。
  • 速度テストは同じ端末・同じ時間帯で3回平均。

注意点コラム

  • メッシュは最適化に数分かかることがある。変更→5分待ってから測る。
  • 速度だけでなく**ジッタ(ばらつき)**も会議の安定性に重要。

ケーススタディ

  • 2階個室で動画が時々止まる。親機を壁から20cm離す+サテライトを30cm移動→速度は同等でもジッタ改善で体感が滑らかに。

第8章|トラブルシュート:それでも不安定なとき

初心者事例

  • どうしても1部屋だけ弱い、夜だけ遅い、TVだけ切れる。

手順(原因切り分け)

  1. 時間帯依存:夜だけ遅い→チャネル混雑の可能性。手動で空きへ。
  2. 端末依存:特定端末だけ切れる→端末の省電力設定や古いドライバーを確認。
  3. 配線依存:ONU〜ルーター間のLANケーブルをCat6へ交換
  4. 電源/熱:ルーターの再起動熱対策
  5. 最後の一手有線化。在宅ワークPCやTVは電力線アダプタLAN配線で確実に。

具体ツール操作

  • ルーターのログ/ステータスを確認(再接続が多いか、エラーカウンタの増加は無いか)。
  • 端末側でWi-Fi省電力をオフ、または「Wi-Fiアシスト/モバイルデータ自動切替」を無効化して挙動を確認。

注意点コラム

  • 床暖房の金属シート直上は減衰が大。ベッド位置の変更で改善することも。
  • 壁の中の金属配管エレベーター式収納など、見えない障害物を疑う。

ケーススタディ

  • 夜9時台だけ会議が不安定。近隣の5GHzが急増。非DFS固定+40MHzに変更で安定。
  • 子ども部屋だけ弱い。ベッドのスチールヘッドボードが遮蔽→配置換えで改善。

第9章|家族みんなが使いやすい運用ルール

初心者事例

  • 家族が勝手にSSIDを増やして混乱、来客Wi-Fiの管理が面倒。

手順(運用の型)

  1. SSIDは最小限:メインとゲストの2つ(必要ならIoT用にもう1つ)。
  2. パスワード管理:QRコードを印刷して冷蔵庫に貼る、または共有ノートに保存。
  3. メンテ日:月1回、再起動+速度チェックの日を決める。

具体ツール操作

  • ルーターのゲストネットワークをオン。帯域制限アクセス制御を設定。
  • ルーターアプリの保護者機能で深夜の通信を制限し、学習時間の集中を助ける。

注意点コラム

  • ゲストSSIDに家庭内NASやプリンターを見せない設定に。思わぬ情報流出を防げる。

ケーススタディ

  • 友人が来るたびに合言葉を伝えるのが面倒→ゲストQRを作成し入口に掲示。手間がゼロに。

FAQ(7問)

Q1. 中継器を2台使えばメッシュと同じですか?
A. 連鎖的に増やすと遅延と帯域ロスが増えます。家全体のシームレス性や自動最適化はメッシュが有利です。

Q2. 2.4GHzだけで十分ですか?
A. 到達性は良いですが混雑しやすく速度も頭打ち。動画・会議・ゲームがあるなら5GHz併用が安心です。

Q3. 6GHz(Wi-Fi6E/7)は使うべき?
A. 混雑が少なく高速。ただし壁や床に弱いため、親機近く〜同フロアで真価を発揮。2階建てではメッシュのバックホールに向きます。

Q4. ルーターはどれくらいで買い替え?
A. 目安は4〜5年。同時接続の増加や新規格対応で体感が変わります。

Q5. 電子レンジでWi-Fiが遅くなる?
A. 2.4GHzに干渉します。ルーターを離す/5GHz優先で改善します。

Q6. 劇的に速くなる“置き方のコツ”は?
A. 中心・高め・開放の3点。壁や金属から20cm以上離し、階段や吹き抜けを活用します。

Q7. 有線はダサい?配線が難しい…
A. 電力線アダプタ巾木モールで見た目を崩さずに引けます。在宅会議用PCだけでも有線は強力です。


まとめ

2階建てでWi-Fiが不安定になる主因は、置き場所障害物、そして設定の最適化不足です。まずはスマホで電波マップを作り、中心・高め・開放の原則でルーターを置き直します。点の弱点には中継器、面の弱点にはメッシュを。チャネル/帯域幅/QoSを整え、検証ループで微調整すれば、どの部屋でも安定した通信が得られます。

今日中にできることは3つだけ:

  • 家の中心or階段付近へルーターを30〜100cm単位で移動
  • スマホでRSSIと速度を測り、地図にメモ。
  • 弱点が点なら中継器、面ならメッシュで補強。

これであなたの2階建て住宅でも、動画も会議もゲームも、気持ちよく繋がるはずです。お疲れさまでした。
(%)

-ホームネットワーク
-, , , ,